本『未来医師』2010年05月31日 23:35

作者:フィリップ・K・ディック
訳者:佐藤 龍雄
出版社:株式会社東京創元社(創元SF文庫)

フィリップ・K・ディックの作品ってことで、何も考えずに買ってみました。
SFの中の定番ものともいえるタイムパラドックスを扱った話です。

ある医者が、突然25世紀の未来へとタイムスリップしてしまいます。
当然、現代とは違った文化や風習があり、25世紀では治療行為がタブーとされているのです。
まあ、現在でも敬虔なキリスト教徒の中には、輸血を拒む人がいるんで、分からんでもないですけど。

そんな未来で、医者のパーソンズは、いやおうなしにある計画へと巻き込まれていくのです。


ディックらしくない、まともな話です。
きちんとタイムパラドックスものとして、話がまとまっていますし、それを目的として書かれた作品です。
なんか拍子抜けしたというか、これはこれで面白くて納得したというか・・・

治療行為がタブーとされている世界へ医者が乱入するという設定は、あまり生かされているとは言い難く、最初はタイムパラドックスものとは別の作品を目指していたのかなとも思えました。

変な期待をせずに、ありのままで読むべき本ですね。

本『FREE フリー』2010年05月18日 23:57

著者:クリス・アンダーソン
訳者:高橋 則明
監修・解説:小林 弘人
出版社:NHK出版

話題の本ってんで、読んでみたが、「うーん・・・」って感じ。

デジタル情報ってのはコピーし放題で、そこにかかるコストはほとんど無視できる程度になってます。
そっから、いかに金(利益)を生みだすかというのが、本書です。


物心ついた時には、グーグル先生のお世話になっていたような人よりも年齢が上の人なら、商品やサービスが無料というのには「裏」があると身構えてしまう人がいると思います。
無料になるからには、その分どっかで余分に金を支払わされるんじゃないかと考えてしまうわけです。

それは古い考え方で、コストを払うのは物質的なものという思い込みがあるのです。
コストを払う対象が、物質的なものではなく、情報であった場合、そのコストは限りなくゼロに近づいていきます。

そんな中でどうやって利益を上げるのか、いくつかの紹介事例が紹介されています。
音楽のダウンロードを無料か格安で行い知名度を上げて、ライブチケットやグッズ販売で売り上げを伸ばす。
この本もそうなのですが、Webで無料公開(英語版ですが)しておいて、著者はセミナー等の公演料で儲けたりしています。



読むうちにだんだんとむかついてきました。
この本って、作者がそれとなく自画自賛しているようにしか思えないからです。
なんで、こんなヤツの為に、金を払って本を読んでいるんだ?って気分になってきました。

それはさておき、この本を読んだからといって、「フリー」であることを利用して、金儲けが出来るかというと、ほとんどの人はこれを適用できないと思います。
フリーの利点を生かすには、デジタルコピー可能なソフト(コンテンツ)を産み出すか、その権利を抑えておく必要があるからです。

それを個人で持っているとすると、音楽家・作家・画家・漫画家ぐらいかと思います。
おそらく、普通の会社員や自営業の人間は、そんなものは持っていないと思います。
オリジナルコンテンツを持っていても、趣味程度では、ほとんど人の目に止まらず、情報の山に埋もれてしまうだけで、情報を発信する労力がかかるばっかりな気がします。

この本が個人で儲ける役には、あまり立たないとしても、本の価値がないってことではありません。
無料のものから利益を出す仕組みが分かりやすく書かれており、そこで何が起きているのか知るのは、面白いものです。

ただし、一般向けに書かれているくせに、一般ピーポーには仕入れた知識が実践で使えないのがイマイチ。

本『メタルギア ソリッド ガンズ オブ ザ パトリオット』2010年05月04日 23:25

作者:伊藤 計劃
出版社:株式会社角川書店(角川文庫)

有名ゲームを小説にしたものです。
ゲームをやったことはないのですが、作者が伊藤さんだというのと、伊藤さんが亡くなったということもあり買ってみました。

正直なところ、読みにくい。
文章が難解だとかいうのではなく、詰め込み過ぎです。
本書は、メタルギア4を題材にしているらしいんですが、メタルギア~メタルギア3までの話が、あちこちに割り込んできます。

過去のいきさつの上に、メタルギア4が成り立っているので、それまでの話が登場するのは当たり前なのですが、それがちょっとウザイ。

ゲームをやっていて、いきさつを知っている人には、「そうそう、そうだったよね」で済むのでしょうが、知らない人には、何の脈絡もなく新しい情報が提示されるので、読みづらいです。

普通に考えれば、読書対象者はメタルギアをプレイしたことのある人間なんだろうから、それはそれで致し方ないんでしょう。

その点を除けば、そのまんまハリウッド映画にでもなりそうな小説で、一人の伝説の傭兵が、己の肉体・知識・経験・精神力を駆使して、巨大組織と戦うってものです。

ゲーマーの意表をつくためや、ゲームの続編を作るために、いろいろと強引な増改築をやったような雰囲気があり、話がスッキリとはしていません。
もうちょっと、スッキリした内容だったら良かった気がします。

本『オカルトゼネコン 富田林組』2010年05月03日 23:31

作者:蒲原 次郎
出版社:株式会社産業編集センター

富田林というと、大阪にある富田林市を想像します。
そこら辺は気性が激しい土地柄という噂があったのですが、作者はその富田林をイメージしていたのでしょうか?

そんなことはどうでもよくて、本書は就職難のご時勢に、大手ゼネコン会社の富田林組に入社した田中青年の成長物語のハズです。

幼卒以下かもとまで言われるバカ大学を卒業した田中は、なぜか受かるはずのない富田林組へと就職します。

意気揚々と迎えた入社式の日、なぜか田中は一人だけ別の場所へ連れていかれます。
しかも、ビルの地下。
なぜか人目につかないようにカモフラージュされた部屋に連行、もとい案内されると、そこには喋る大仏が!!
いやいや大仏じゃなくて、大仏と見まごう如きの立派なパンチパーマの人間であった。
その他にも、京本正樹と同じ髪型の「ホスト」と呼ばれる人や、「軍曹」「オタク」などと呼ばれる人のいる、やたらと濃い職場であった。
ちなみに、大仏は通称「ボス」。

入社の挨拶として、巨大な杯に日本酒をなみなみと注がれて飲まされたり、室内には「鬼頭組」と書かれた提灯があったり、どこか普通の部署ではありません。

それもそのはず、田中の配属された鬼頭組は、表に出てはいけない部署なのです。

次第に明かされる、鬼頭組のナゾの仕事。自衛業の方とのお付き合いやら、呪術システム管理など。
さらに、鬼頭組の恐るべし政治的影響力。

そんな中、新入社員田中は、無事に企業戦士としてやっていけるのでしょうか?


かなり、ぶっとんだ内容です。
似ている本として思いつくのが「大久保町の決闘」です。
ハチャメチャなところはそっくりだし、主人公がキレイな女性に弱く、そして妄想癖の持ち主で、成り行きでとんでもないことに巻き込まれます。
さらに、本書の主人公は田中で、「大久保町の決闘」の作者も田中。

ただし、話が練られているかどうかを考えると、「大久保町の決闘」に軍配が上がります。

プロローグで入社3年目の田中が、入社式からを振り返る形式で本編に入るのですが、作中では3年分の時間は経過していません。
鬼頭組にいる「先生」は、なにか特技を隠し持っているのかと思ったら、そういうわけでもない。
その辺り、今ひとつツメが甘く、勢いで書いちゃったのかなと感じてしまいます。

あと、会話そのもので笑わせてくれると、良かったんだけどな~。

とは言っても、そんな些細なことで、本書のユニークさが失われるかというと、そんなことはありません。
細かいことは気にせずに、一気に読んでくれということなんでしょう。

本『日本破綻 「株・債券・円」のトリプル安が襲う』2010年04月06日 23:44

著者:藤巻 健史
出版社:株式会社講談社

日本という国の借金が、想像できないぐらいに膨らんでいるという話を聞いたことがない人はいないと思う。
実際、世界でも有数の借金大国である。
それどころか、いつ破綻してもおかしくない状況にあります。

しかし、国民も政治家も、その現実に目を向けないようにして暮らしています。
みんな、いつか破綻すると分かっているんですが、怖くて目を向けられないのだと思います。それとも何かあっても今の生活は保障されるだろうと安心しているのか、金額が巨大すぎてピンとこないのか。
ともかく、真剣に考えているのはごく少数でしょう。

著者の藤巻さんは、減らないどころか増え続ける借金と、それに全く危機感を抱いていない日本国民を心配して、この本を書いたのだと思われます。

本書の最初に、いかに日本という国が収入に対して、支出が多く、かつ過去の借金を返す見込みが低いのか、その現実を見せ付けられます。

この本を読むと、本当に終わってると感じます。
だって、法人税を上げようが、所得税を上げようが、消費税を上げようが、借金は減りそうにないもの。
その辺りの、今まで漠然とヤバイと思えていたものが、分かりやすく書かれています。分かり易すぎて、反論する気も起きません。


そして中盤からは、どうすれば、ソフトランディングしつつ、日本が借金体質から抜け出せるのか、アイデアが書かれています。
それは、円安にして、輸出で儲けながら、市場型の資本主義を目指すというものです。
このアイデアを受け入れることができるかどうかは別として、アイデアとしては面白く、やってみる価値はあると思います。

ただし、それには、円高は良いこと、行き過ぎた資本主義は悪いことという、固定観念を国民が捨て去る必要があります。
その啓蒙のためにも、この本を書いたのだと思います。



最近、ちょっと円安になってますが、本書を信じるのであれば、今のうちに外貨を持っておくべきです。
そうすれば、ハイパーインフレになって、うまい棒が1本1万円になっても、外貨を円に交換して、困難な局面を乗り切れるようになるかもしれません。


こんな日本に誰がした?
って気がしなくもないですが、結局、みんなでやっちゃったんだよね。
身の丈に合っていない国のサービスを大なり小なりみんなで甘受してたわけだし、選挙という制度がありながらも、増え続ける借金を止めることはできなかったんだし。


とりあえず、最初の1章は読むことをお勧めします。