本『異形コレクション 京都宵』その42008年10月01日 23:45

監修:井上 雅彦
出版社:株式会社光文社(光文社文庫)

「陰陽師 鏡童子」夢枕 獏
京都をテーマにして、夢枕 獏さんとくれば、安倍晴明の陰陽師でしょう。
そんなわけで、陰陽師シリーズの1話となっています。
陰陽師シリーズは途中まで読んでいたんですが、だんだんとマンネリ化している気がしたんで、読むのをやめてしまいました。
久々に読んでみたんですが、たまに読むと、平安の怪しげな雰囲気がいかにも怪異や妖怪っぽくて、いい感じでした。


「西の京 戀幻戯」朝松 健
京都という存在に恋こがれ、そのコピーを作ってしまった家系の人々の話です。
これって、史実なんでしょうか?歴史に疎いN村には、史実なのかどうかは、さっぱり分かりませんが、本当にあったかのように思えてしまいます。
京都にあこがれ生きて、そして、死ぬときも優雅に死ぬという、なんとも念の入った人々です。
京都への思いが強い分、京都よりも京都らしくなってしまうぐらいです。
そのラストは、恐ろしくもあるんですが、まさに雅な終焉でした。


「常夜往く」五代 ゆう
自宅にある、とても古い松の木を切り倒すのを、見送る女性の話で、まるで美しい絵本のようです。

松の木のために買ってきたルチル水晶や、家にずっと居座る白い蛇、セミの抜け殻や、かんしゃく持ちの柿の木といったものたちのイメージがありありと思い浮かびます。

白い蛇や、柿の木とともに、松の木の最後を見送るんですが、松の木が龍となり、空を駆けてゆくシーンは、おごそかで感動的です。
これは、花草輪廻だ!と感じました。


「夢ちがえの姫君」早瀬 れい
あまりホラーっぽくない話が多い本巻の作品の中では、ホラーテイストのある作品です。

悪夢と吉夢にとりかえて、さらに現実にも良いことが起きるということで、隠れた評判のある高貴な血筋の女性の話です。

だんだんと隠された真実に近づいていく、ドキドキ感があります。
知ってしまうと怖いとけど、ついつい気になって一歩踏み出してしまうような感じです。

映画『童貞ペンギン』2008年10月02日 21:36

「皇帝ペンギン」って映画があったけどあれのパロディです。

さすがに、これを劇場で見る気は起きなくて、DVDになったらレンタルしようと思ってたんですが、なかなかDVDにならないんで、こりゃダメかな~と諦めていたら、ようやくDVD化されました。


しかし、期待していたよりも、つまらん。

主に皇帝ペンギンが動いているところへ、エロで下品なアテレコをしている映画なんですが、いまいち笑えません。
もうちょっと、楽しいのを想像してたんだけど、なんかいまいち。

映画を作っている人達は、それなりに楽しんでやっている気がするんですが、見せられる方としては、それほど楽しめません。

さらに、途中で飽きてくるし。
このつまらなさが、DVD化が遅れた理由なのかと思ってしまいました。

皇帝ペンギンにアテレコするだけで、1本の映画にするにはちょっと無理があったかな~、って思います。
会話が面白いならいいんだけど、ひねりの無いエロと下品なネタばかりだったからな~。
会話が重大な意味を持つ映画なんで、そこにもっと力を注いでほしかったです。

ナレーションは比較的、マジメにやっているんですが、途中からだんだんとふざけてくるのは、いただけません。
ペンギンたちの下品な会話の対比として、ナレーションはクソマジメに淡々と続けた方が良かっと思う。

本『異形コレクション 京都宵』その52008年10月03日 23:38

監修:井上 雅彦
出版社:株式会社光文社(光文社文庫)

「宵の外套」井上 雅彦
都市伝説とドラキュラが入り混じったお話です。
ホラーというよりは、幻想譚という雰囲気です。

途中で吸血鬼という単語は登場するものの、それは血を吸う何者かという意味であって、ドラキュラ伯爵の血族を意味するものではありません。
その吸血鬼以外には、ドラキュラはヴァンパイアという単語は一切出てきません。
それを直接示す単語を使おうものなら、話の全てが崩壊しそうな繊細さが感じられました。


「魔道の夜」森 真沙子
昔、住んでいた婦人寮で体験した話。
友人の死と、怪しい噂を合わせて考えていくうちに、知ってはならない秘密に近づいていきます。

薄暗く、じっとりした雰囲気の話ですが、冒険小説っぽい一面もあります。


「水翁よ」赤江 瀑
水翁という水の妖怪の存在に、とりつかれてしまったかのような人と、その人を追いかける人の話です。

前半は何が起ころうとしているのか、分からなくって、ひょっとしてこのまま、何やら分からんうちに終わるのか?
と思っていたら、途中から話が理解できるようになって、安心しました。

決して届くことのないものを追いかけるような、哀しい話です。

本『青い罠』その12008年10月04日 09:57

作者:阿刀田 高
出版社:株式会社集英社(集英社文庫)

すげー上質な短編集です。
これ以上に足すことも、引くこともできないぐらいに美しい構成をしていて、ラストの1ページや数行で、「うわっ、そうだったのか!!」と驚かされます。
それが、また快感な短編たちです。

「隣の女」
シングルマザーの恭子の元へ、昔のクラスメートの晴美が突然やってきた。
晴美は、ちょっとテンポの遅い人間で、会話をするには慣れが必要な子でした。その性格は今も変わっておらず、恭子は晴美の真意をはかりながら会話をします。
そして、晴美が隣の家に住んでいる女性のことに話題が移ります。その女性は何かと晴美にイヤミを言うんですが、晴美の夫には笑顔でへつらうのです。
そんな愚痴を聞かされた恭子は、晴美を車で家まで送っていくことになりました。
そこで見たものは・・・
このラストは、衝撃的でした。何か腑に落ちないものがスッキリすると同時に、「やられた~~~」と思いました。


「凶事」
病気がちな姉を支えていた妹。
しかし、妹は姉にかかりっきりで自分の好きなことも出来ず、姉には卑屈なイヤミを言われていました。
その姉が乗った飛行機が墜落したと聞いて、航空会社に向かうと・・・

こういう人間がいそうで、イヤです。


「ギャンブル狂夫人」
ロアルド・ダールの「南から来た男」を彷彿させる話です。
妻と旅行中の男性が、旅先で知り合った、ちょっと年をとった夫人とギャンブルをすることになります。
お互いに夫婦で旅行中なのですが、それぞれパートナーが賭け事をするのは善しとしないので、パートナーには黙って賭け事を行います。
賭けは、男が買ってきた複数のタバコを、夫人が銘柄を見ずに吸っただけで判別できるかという利き酒ならぬ、利きタバコ。
全てあてれば夫人の勝ち、一つでも外れたら男の勝ち、掛け金は30万円!!
賭け事をしていく中で、自分の行動ではどうにもならずに、見届けるしかない、そんな緊張感が伝わってきます。
そして、緊張の糸が切れたときにやってくる作者からの絶妙なプレゼント、最高です。


「干魚と漏電」
几帳面を固めて人型に押し込んだような女性が、請求される電気料金がおかしいことに気がつきました。
電力会社にクレームを言って、電気メーターを調べさせたものの、メーターは正常。
それでも納得いかない女性は、深夜に電気製品を全て止めて、コンセントも抜いて電気メーターを見ると、なぜか回っています。
漏電も可能性があるので、電力会社の人間もやってきて調査すると、電源ケーブルが床下から延びており・・・
序盤に仕掛けられた近所の噂話と、シシャモのグロテスクな描写というトラップが、ラストに発動する名作。

映画『死神の精度』2008年10月05日 23:06

伊坂 幸太郎さんの同名小説を映画化したものです。

小説のあの感じをどこまで映画で表現できるのか、期待したいような、見たくないような。


まず死神のイメージが違う。
まあ、こればっかりは、どうしようもないけど、もうちょっと異邦人オーラが欲しかった。
これが、漫画が原作だと、あまりのギャップに苦しむんだけど、小説だとまだ許せますね。

映画は、小説版から3話をピックアップしています。
さすがに、全話やると、映画の尺が長くなりすぎるか、1話の時間が短くなるんで、妥当な判断と言えるでしょう。

話は、クレーマーに声を聞かせてくれとせがまれる苦情処理担当の女性の話と、ヤクザの抗争の話、そして老夫人の営む理髪店の話です。
それぞれが、当然ながら関連しています。

トータルとしては、やっぱり小説を超えていないと思いますが、それでも健闘していると思います。
原作の雰囲気を可能な限り表現しようとしているのが、感じられました。

さすがに、言葉遊びの部分は、映像にするとちょっと無理があったようです。
あまりにも、ぎこちなさ過ぎて、わざとらしくなってました。
あえて、入れなくても良かったんじゃないかと思いますが、あの会話の妙がないと、死神の精度にはならないんで、外せないしな~。

死神の世界と、こちらの世界とを行き来する際に、モノレールの高架のような場所を歩いているシーンがあるんですが、あそこに見える橋脚がいかにもコピペで作ったように、雨だれの汚れがどれも同じように見えるのが、いただけない。
せっかくのオリジナルシーンなのに、台無し!


個人的には、雪山に閉ざされた館で発生する殺人事件のネタを入れといて欲しかったな~。
死神ミステリーという、いい話なんだけど。




映画を見ていると、降っていた雨が強くなってきて、雨音がだんだんと映画の音にかぶるようになってきました。
パーフェクトディザスターの時のカミナリもそうですが、映画で起こっていることと、現実の事象がダブると、不思議な気持ちになります。